ハムレットのシンメトリー

Hamlet's Questions and One Man's Answers

シンメトリー

47.アムレートからハムレット

シェイクスピアは『ハムレット』をはじめとする多くの戯曲作品の他に詩も残しています。その中でも『ソネット集』はいくつか翻訳もされていて有名かと思います。このソネットというのは詩の形式で十四行詩と呼ばれるように14行で特定の押韻構成があります。…

46.フォリオと『ハムレット』対称構成

前回は『ハムレット』のテキストに色違いの付箋を貼ってみました。そのようにすることで『ハムレット』の対称構成が実際に目に見えるようになりました。このように対称構成が目に見えるようになると、シェイクスピアの創作が身近に感じられるとともに、より…

37.三一致の法則、線遠近法とマニエリスム

前回は凸面鏡とアナモルフォーズの絵画を例として、『ハムレット』のシンメトリー構成が歪んだシンメトリーである事をみました。このブログの3.ルネサンスのシンメトリーで見ましたように、シンメトリーはルネサンスの芸術で重視された概念でした。 絵画の…

36.アナモルフォーズの演劇

前々回からの続きです。前々回は『ハムレット』のABCDEF| fedcba構成の中心である第三幕第二場のガートルードに向ける鏡について考察しました。今回は、その鏡に関連しながらABCDEF| fedcba構成全体について考えてみたいと思います。 このブログの3.ルネサ…

32.『ハムレット』シンメトリー構成とその中心

前回までで、『ハムレット』のシンメトリー構成の対称ペアは全て公開しました。しかしそれは私が見つけた限りのものですので、もしかすると他にも対称的に見る事ができるものがあるのかもしれません。 今回からは、この『ハムレット』のシンメトリー構成全体…

31.クローディアスの懺悔とガートルードの悔悟

前回は第三幕第三場のハムレットが身を隠しクローディアスを殺そうとする場面と、第三幕第四場のハムレットが身を隠しているポローニアスを殺してしまう場面が対称となっている事を見ました。これは確かに対称となっているのですが、他の対称ペアと比べて面…

30.『ハムレット』の最も中心にある対称ペア

さて、今回はいよいよ『ハムレット』のシンメトリー構成の最後のペアを探します。シンメトリー構成の表に残っている空欄は1つだけで、それは第三幕第三場クローディアスが神に自らの罪の許しを祈っているところを、身を隠したハムレットが背後からクローディ…

27.ハムレットの手紙と対称となるのは

今回から、再び『ハムレット』のシンメトリー構成に戻ります。前回まで、対称構成の表はだいぶ埋まり、あとは2か所が空白になっているだけです。 今回は、第二幕第二場でオフィーリアにあてたハムレットからのラブレターをポローニアスが面白半分に批評しな…

23.父を殺された息子たち

前回は、ルネサンスにおいて重要な概念である精気というものが、どのようなものであるかを記してみました。今回はこのブログの主題である『ハムレット』のシンメトリー構成に戻ります。 これまでに解説してきた『ハムレット』の対称ペアはA|a 亡霊と亡骸、B|…

21.弔いと結婚、記憶と思い

『ハムレット』のシンメトリー構成の続きですが、ここまではまだ劇中劇の対称ペアがハムレットのイギリスへの渡航であることが明らかになっただけです。これを対称ペアの表に書き加えてみましょう。まだ半分の対称ペアが空白ですが、今回は第一幕第二場の王…

19.ここまでの要約

前回は、『ハムレット』のシンメトリー構成の中で、劇中劇とハムレットのイギリスへの渡航から、世界劇場にまで考察を広げていきました。この劇中劇とイギリスへの渡航の対称ペアは、それ以前に考察した父ハムレットの亡霊と息子ハムレットの亡骸の対称ペア…

11.『ハムレット』の劇外劇

前回は劇中劇と閉幕後のホレイショーの語りとの関係を考察し、この二つが対称的に作られているという事を指摘しました。少し入り組んでいましたので、もう一度この二つの関係を見ていきたいと思います。 まず、劇中劇とは『ハムレット』の中でどういうものか…

7.舞台の上に To be,or not to be

前回、前々回と父ハムレットの亡霊とハムレットの亡骸の対称性を検討してきましたが、まだ他にも色々と比較できる箇所があり面白いですので、今回も引き続き亡霊と亡骸についてです。 次に引用するのは第一幕第一場で亡霊を目にしたホレイショーが亡霊に問い…

6.語られたフォーティンブラス、そして現れたフォーティンブラス

前回は父ハムレットの亡霊と息子ハムレットの亡骸の対称性を検討し、それぞれを霊と体とした際に、あのクエスチョンを投げかけてみました。To be か Not to be か? そして亡霊が物質的な視点から見ると Not to beとしてあり、霊的な視点から見れば To beで…

5.父ハムレットの亡霊と息子ハムレットの亡骸

父ハムレットの亡霊とハムレットの亡骸の対称関係からみていきましょう。 『ハムレット』全体の中に父ハムレットの亡霊の登場は3カ所あります。第一幕第一場で歩哨とホレイショーに現れ無言で去っていく場面、第一幕第四場から五場にかけて自らが殺害された…

4.『ハムレット』の ABCDEF| fedcba 構成

前回はルネサンスのシンメトリーについて、ラファエロの『アテネの学堂』とウィトルウィウス的人体図を例としてみました。そしてシンメトリー構成はルネサンス芸術の特徴の一つであるため『ハムレット』の中にシンメトリー構成が作られているという事もあり…

3.ルネサンスのシンメトリー

前回、『ハムレット』の中にシンメトリー構成があるのではないかとしたキース・ブラウンの説を検討してみました。*1 私自身も『ハムレット』の中にシンメトリー構成を探してみたわけですが、その結果を記す前に、前回シンメトリーがルネサンス期の芸術におい…

2.『ハムレット』のシンメトリー

私がハムレットの研究をするのに参考にし影響を受けた本を紹介します。 そのものずばり『ハムレット研究』 後藤武士 研究社出版 1991年です。この本のはしがきにF.P.ウィルソン教授の言葉として次のように書かれています。 「Hamletに関する書物を全部読むこ…