ハムレットのシンメトリー

Hamlet's Questions and One Man's Answers

To be、 or not to be

51.Q1の”To be, or not to be”

さて前回からの続きで、『ハムレット』のQ1に関してです。まずは前回のおさらいを簡単に。『ハムレット』にはQ1と呼ばれるテキストがあるのですが、このQ1は通常の『ハムレット』の半分程度の長さしかなく、その内容もあっさりしています。そのためこれは『…

49. ”To be, or not to be, that is the question” その問題とは何だったのか?

ウィリアム・シェイクスピア 前々回の47.アムレートからハムレット - ハムレットのシンメトリーの記事では、ニューケンブリッジ版『ハムレット』の序文で述べられている『ハムレット』の題材となったアムレートの物語と『ハムレット』を比較した際の6つの変…

47.アムレートからハムレット

シェイクスピアは『ハムレット』をはじめとする多くの戯曲作品の他に詩も残しています。その中でも『ソネット集』はいくつか翻訳もされていて有名かと思います。このソネットというのは詩の形式で十四行詩と呼ばれるように14行で特定の押韻構成があります。…

46.フォリオと『ハムレット』対称構成

前回は『ハムレット』のテキストに色違いの付箋を貼ってみました。そのようにすることで『ハムレット』の対称構成が実際に目に見えるようになりました。このように対称構成が目に見えるようになると、シェイクスピアの創作が身近に感じられるとともに、より…

45.『ハムレット』対称ペアに付箋を貼ってみよう

今回のネタは、以前のはてなブログ今週のお題「買いそろえたもの」で使おうと思っていたネタです。このブログをより楽しみ、理解するために買いそろえるとよいものを紹介します。 まずは『ハムレット』のテキスト、これはどこの出版社でもいいのですが、なる…

42.ハムレット父と子の霊

前前回は第五幕第一場の墓掘りの場面の考察をしました。この第五幕第一場にハムレットが登場すると、墓掘りはまずハムレットにとって見ず知らずの人々の遺骨を掘り返します。そして次にハムレットが幼い頃に親しんだ宮廷の道化ヨリックの頭蓋骨を取り上げ、…

36.アナモルフォーズの演劇

前々回からの続きです。前々回は『ハムレット』のABCDEF| fedcba構成の中心である第三幕第二場のガートルードに向ける鏡について考察しました。今回は、その鏡に関連しながらABCDEF| fedcba構成全体について考えてみたいと思います。 このブログの3.ルネサ…

30.『ハムレット』の最も中心にある対称ペア

さて、今回はいよいよ『ハムレット』のシンメトリー構成の最後のペアを探します。シンメトリー構成の表に残っている空欄は1つだけで、それは第三幕第三場クローディアスが神に自らの罪の許しを祈っているところを、身を隠したハムレットが背後からクローディ…

28.歌は精気にどのように作用するか

前回は、ハムレットの手紙とその詩とオフィーリアの歌う歌を、対称に描かれているものとして、その手紙と詩を心の内を他者に伝えるための媒体として考察しました。今回は、前回考察したこの過程をルネサンス思想の下に、読み直してみたいと思います。 このブ…

21.弔いと結婚、記憶と思い

『ハムレット』のシンメトリー構成の続きですが、ここまではまだ劇中劇の対称ペアがハムレットのイギリスへの渡航であることが明らかになっただけです。これを対称ペアの表に書き加えてみましょう。まだ半分の対称ペアが空白ですが、今回は第一幕第二場の王…

19.ここまでの要約

前回は、『ハムレット』のシンメトリー構成の中で、劇中劇とハムレットのイギリスへの渡航から、世界劇場にまで考察を広げていきました。この劇中劇とイギリスへの渡航の対称ペアは、それ以前に考察した父ハムレットの亡霊と息子ハムレットの亡骸の対称ペア…

18.グローブ座の To be, or not to be

前回は『ジュリアス・シーザー』のキャシアスの台詞の構造と『ハムレット』の構造について、両者に共通するものがある事を指摘しました。そして、キャシアスの台詞の「われらのこの崇高な場面」という言葉が、シェイクスピア自身の実際の経験をもとにしてい…

13.舞台の彼方のイギリス

前回は『ハムレット』のシンメトリー構成において、劇中劇と対称となるのはハムレットのイギリスへの渡航であるという事を示して、その二つがどのように対称的に作られているかをみました。そして、劇中劇が舞台内に集中するように作られているのに対して、…

7.舞台の上に To be,or not to be

前回、前々回と父ハムレットの亡霊とハムレットの亡骸の対称性を検討してきましたが、まだ他にも色々と比較できる箇所があり面白いですので、今回も引き続き亡霊と亡骸についてです。 次に引用するのは第一幕第一場で亡霊を目にしたホレイショーが亡霊に問い…

6.語られたフォーティンブラス、そして現れたフォーティンブラス

前回は父ハムレットの亡霊と息子ハムレットの亡骸の対称性を検討し、それぞれを霊と体とした際に、あのクエスチョンを投げかけてみました。To be か Not to be か? そして亡霊が物質的な視点から見ると Not to beとしてあり、霊的な視点から見れば To beで…

5.父ハムレットの亡霊と息子ハムレットの亡骸

父ハムレットの亡霊とハムレットの亡骸の対称関係からみていきましょう。 『ハムレット』全体の中に父ハムレットの亡霊の登場は3カ所あります。第一幕第一場で歩哨とホレイショーに現れ無言で去っていく場面、第一幕第四場から五場にかけて自らが殺害された…

1.”To be, or not to be, that is the question. “ その何が問題か?

”To be, or not to be, that is the question. “とはシェイクスピア作品のもっとも有名な台詞のひとつでしょう。これは『ハムレット』第三幕第一場でのハムレットの独白での台詞です。ハムレットはこの長い独白で死についてを考え、それを眠りに例え、さらに…