精気
『ハムレット』の批評では、なぜハムレットは復讐を先延ばしにしたのかという事が、しばしば問題として取り上げられます。後藤武士の『ハムレット研究』でも第4章が「復讐遷延論」として設けてあり、18世紀から20世紀までの間、この問題がどのように考えら…
前回は第一幕に登場する父ハムレットの亡霊と、第五幕第二場で死ぬハムレットを、死後の精気のあり方という観点から見ました。精気は肉体と霊魂、見えるものと見えないものを媒介する役割を持ちます。そのため宗教的な場面では、神的な存在との媒体ともなる…
前前回は第五幕第一場の墓掘りの場面の考察をしました。この第五幕第一場にハムレットが登場すると、墓掘りはまずハムレットにとって見ず知らずの人々の遺骨を掘り返します。そして次にハムレットが幼い頃に親しんだ宮廷の道化ヨリックの頭蓋骨を取り上げ、…
前回は第三幕第三場のハムレットが身を隠しクローディアスを殺そうとする場面と、第三幕第四場のハムレットが身を隠しているポローニアスを殺してしまう場面が対称となっている事を見ました。これは確かに対称となっているのですが、他の対称ペアと比べて面…
前回は、ハムレットの手紙とその詩とオフィーリアの歌う歌を、対称に描かれているものとして、その手紙と詩を心の内を他者に伝えるための媒体として考察しました。今回は、前回考察したこの過程をルネサンス思想の下に、読み直してみたいと思います。 このブ…
前回は精気というものがルネサンス思想の中で重要な要素であり、シェイクスピアの作品、とりわけ『ハムレット』の読解を深めるために、この概念が必要なのではないかとしました。一般的には『ハムレット』の読解に精気の概念などが必要だなどとは言われるこ…
『ハムレット』のシンメトリー構成の続きですが、ここまではまだ劇中劇の対称ペアがハムレットのイギリスへの渡航であることが明らかになっただけです。これを対称ペアの表に書き加えてみましょう。まだ半分の対称ペアが空白ですが、今回は第一幕第二場の王…